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ゴミはある程度分別しなければいけない。汚らしいゴミ袋をわざわざ開けて、ゴム手袋をつけて処分施設のゴミ箱にそれぞれ分ける、というのを繰り返す。共有部分にあるゴミ処理場に汗水垂らしながらゴミをせっせと運び続ければ、自然と他の収容者の様子も目につくことになった。
そう、こういう場所であるから、皆掃除が苦手な者ばかりと思っていたのに。
隣の田んぼが青く見える現象なのか、それとも本当に実は掃除が得意なのか。中にはいるのである、妙に手際が良く見える人間が。
その若い男女は、他のメンバーと比較して明確にてきぱきとゴミ捨てを行っていた。元々知り合いだったのか、二つの独房のゴミを運び出すのに互いに協力しあって、非常にスムーズに清掃を終えているようだ。政府の方針を考えるならば、全ての独房の初期の“汚染度”はほぼ同程度であったはずである。しかし、自分の部屋に戻り際にちらりと見たところ、隣り合った男女の部屋はどちらも一日でほとんどのゴミが片付くに至っているように思われた。
気づいた者は、他にもいたはずだ。そして、皆が僕と同じように焦ったはずだ。
もしかしたら、一番掃除が進んでいないのは自分なのではないか。
このままでは自分が政府に“処分”されてしまうのではないか、と。
――か、考えろ!考えるんだ……!
初日。僕は寝る時間を削って、清掃に励んだ。ただでさえ子供の頃から掃除が苦手で叱られてばかりいた僕である。大学生になった今でも何も変わっておらず、正直ゴミの分別もいい加減、トイレ掃除風呂掃除も一週間にやるかやらないかといった有様だったのだ。切羽詰ったからといって、いきなり掃除が得意になるなんてことはない。
あの男女が、きっと一番と二番の成績を取るだろう。だが、実は他の収容者達も同じくらい部屋を綺麗にする技術があったとしたら。あるいは彼らに感化されて、今までよりもずっと清掃の速度や効率を考えるようになっていたら。
――生き残るために……お、できることはないのか!?こんなところで、死んでたまるか……!
ゴミの下からざらざらと出てきた、砂なのか鼠の糞なのかもわからないものを箒とちりとりで片付けながら。僕は、この“おそうじデス・ゲーム”をどうにか生き残る方法を考えていた。
そして。
僕が考えついた、ただひとつの方法は――。
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