ゴミ、ゴミ、ゴミ。

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 *** 「う、う、嘘だあああ!」  中高年らしき痩せた男が、泣き叫びながら両手と足を拘束され、連れていかれる。 「お、俺は部屋をちゃんと綺麗にした!ゴミも全部きっちり出したし、クレンザーで床も壁も磨いたんだ!なんで、何で俺の部屋の汚染度が一番やばいなんてことになるんだよおお!」 「黙れゴミめ!機械は嘘をつかない。一番汚染度が高かったのは貴様の部屋だ、処分対象はお前だ」 「嘘だ、嘘だ、こんなの嘘だあああ!」  ぎゃあぎゃあ騒ぎながら引きずられていく男は、巨大なベルトコンベアーのような機械の上に乗せられた。僕達他の収容者はそれをぐるりと取り囲むように立たされ、全てを見ろと強制されている。  ちらり、と僕の方をひとりの老婆が見て、すぐに目を逸した。“気付いて”いながら何も言わない。賢明な判断だろう。あの中年男が犠牲になることで助かったのは、彼女も同じであるのだから。 ――僕は、間違ってない……!  あの時。僕の頭の中に舞い降りたのは、ドス黒い羽を持った悪魔だった。  この恐ろしいおそうじデス・ゲームは、誰より部屋を綺麗にすることが重要なのではない。いかに、最下位にならないかが大切なのである。つまり、“僕の部屋が一番汚い”状況でなければ、何も問題はないのだ。  だから僕は、最悪の手段を使った。  審査が行われるのは、皆が寝静まった深夜零時。その直前に、僕はゴミ捨て場に行く途中で――鼠の糞が大量に入ったチリトリの中身と、“小便ペットボトル”の中身をあの部屋の牢の隙間から大量に流し込んだのである。既に就寝していた彼は気づかなかったのだろう。汚れに汚れていたのは、彼の部屋の隅の方だけであったのだから。それでも、かの部屋の“汚染度”を十分すぎるほど引き上げたはずである。  人間が最も不愉快に思う汚染物質の一つが、生き物の排泄物であることは言うまでもないことなのだから。
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