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ゴミ、ゴミ、ゴミ。
この国が、何やら怪しい宗教の教祖様に乗っ取られたことは誰もが知っていた。美化創世クリスティーナ教とか、とにかくそんなよくわからない名前の宗教だ。僕達が政治に無関心であるうちに、そんな謎の名前の宗教が国で規模を大きくし、その膨大な信者数に任せて選挙で勝利。教祖様とやらが、いつの間にか総理大臣までの仕上がり、信者達だらけになった与党を使って政治を牛耳っている、と。
確かに、ちらほらそんなニュースが聞こえていたような気がしている。大学でも、そんな話をしていた奴がいたようないなかったような。でも、税金が大きく跳ね上がるわけでもなければ、学業にも僕がやっているアルバイトにも影響が出るわけでもなく、生活が変わる様子もない。
だから深く考えなかったのだ。――こうして自分が見知らぬ多くの人達と共に拘束され、収容所送りにされるまでは。
「えー皆様。中には何故自分達が此処に集められたのかわかっていない方もいるようですので、ご説明させていただきますね」
教団の偉い人=内閣のナントカ大臣であるというおじいさんが、壇上に立ってニコニコしながら話をした。収容所の体育館のような場所。強制的にジャージに着替えさせられ、現在は手枷足枷をハメられている僕達の前で。
「皆様は、我が国の総理大臣であり偉大な指導者でもある“アルデーネ新星”様が定めた法律に違反いたしました。国家清掃美化維持法というものです、聞いたことはないですかね?この国のありとあらゆるところを皆さんでお掃除し、清潔を保ちましょうという法律です。犯罪者、人に迷惑をかける人、不潔な人をなくしましょうということですね。我らが偉大なる指導者様は、この国がゴミで埋まっている現状を酷く嘆いておいでなのです。我々は国民として、美しき世界を実現する義務と権利があるというわけですね」
こっかせいそうびかいじほう。名前が長いわ!なんて普段の僕ならもう少し景気よくツッコミを入れただろうか。これが家族などとの会話なら。気心の知れた友人同士であったなら。
残念ながら張り詰めた空気と、僕達をぐるりと取り囲む銃を持った兵士たちのせいで、そんなおふざけが許される空気ではなかったのだけれど。
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