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米ナスではないので細く長い胴体へとまんべんなく、竹串で穴を刺していく。
こうするとオーブンで焼いた時に皮が爆発しないためにだったが、何だか痛そうだった。
カッティングボードの上のナスは僕から見て右に曲がっている。
彼のと同じ向きだったから余計にそう思う。
皮目に穴を開けたナスにオリーブオイルを塗すのは、水分が抜け出さないようにだった。
刷毛を用いるとかえって洗うのが面倒なので、僕は手のひらを使う。
握りしめた手で二、三度行き来すると、ただでさえ艶やかな胴体がますます黒光りをした。
彼の感触とはまるで違う。
彼のはもっと身が詰まっていて、当たり前だが肉にくしい。
そもそも塗り込めているモノからして違っている。
僕は思わず食欲のではない唾を飲み込んだ。
もれなくオリーブオイル塗れにしたナス五本を250℃に温めておいたオーブンへと放り込む。
焼けるまでの間に調味料を合わせておく。
材料は白練りごまにレモン汁とおろしにんにく、そして塩。
味付けはいたって簡単だ。
――練りごまが隠し味にして、この料理の決め手だった。
ナスの胴体に今度は竹串を深ぶかと刺して焼き上がりを確かめてみる。
竹串は難なく吸い込まれた。
抜き去った穴の上にはナスの身に留まった水分がにじみ出し盛り上がった。
シワクチャになったへたを切り落とし、上から皮を剥いていく。
黒い皮の下からほのかに緑かかった黄色いナスの身が現れる――。
僕はこの作業が好きだった。
ナスに限らず他の野菜でも果物でも、何でも好きだった。
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