出会い

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「三浦先輩もモテてるの? 社内で?」 「噂では、牧瀬さんや尾崎さんの次に人気らしいよ」 「へー」 「那奈はやっぱりあの人しか興味ないんだね。片想いの彼」 「片想いって……そんなんじゃっ」 「あんなの片想いでしょ。那奈はその人のが忘れられないって言ってるけど、それも立派な片想いだと思うなぁ」 「でも私、顔知らないんだよ? それで片想いっていう?」 「初めは香りに惹かれてただけかも知れないけど、もう2年だよ。2年も探し続けてまだ香りを忘れてないんだよ」 「それは…元の香りの香水があるし」 「例え顔を見てたとしても、2年もすれば忘れるよ。元の香水があるからだとしても、那奈の想いは普通じゃないよ」 「やっぱり……変かな?」 「変っていうより、まるで初恋の人を探してるみたい。何度もその交差点に行ったりさ、その香りに会いたいっていうより、その人に会いたいんじゃないの?」 「…………そんな……こと……」 「ほんとは会いたいんだよね。その人に……」 「……うん」 凛の言葉が胸に刺さり、ズキンと痛む。 街で偶然会った人に、もう一度会えるなんて奇跡だ。 どんなに必死に香りを探しても、あの時のが見つかる事はない。 あの香りは、あの人のもの。 本当はとっくに分かっていた。 香水はある。 けど、あの人がつける事であの香りは成立する。 私がずっと求めている香りは、なんだから。 その事に気づいた時、もう会えないんだと泣いた。 その事を彼女に見透かされて、言葉で改めて思い知らされる。 (私は彼に惹かれている。顔も知らない彼に……)
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