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第1話 尋ね人とお嬢様生徒会長
小峰華菜は入学式が終わると、教卓に両手をついてクラスメイト達に語り始めた。
「ねえ、みんな。湊由里香が2年何組か知ってる人いたら教えて」
教室は先程までと何も変わらず静まったままである。
女子しかいない教室内では、まだ初対面の相手をどういう人物か伺っている段階。突然みんなの前に出てきて語り掛ける得体のしれない人物に対する警戒心は高まるばかり。
「もったいぶらないで欲しいんだけど。私はあいつに会うためにここに来たんだから」
クラスメイト達が頭に?マークを浮かべて不審な目で見ていることは華菜も薄々感じてはいるが、そんなことは気にしている場合ではない。
華菜は教壇の目の前に座っている子に聞いた。
「ねえ、湊由里香ってどのクラスにいるか知らない?」
「いや……わからないです」
聞かれた子は不審者を見る目つきに近くなっている。
「誰も知らないってことはもしかして私黒井に騙された!? やっぱりこの学校に湊由里香は来てないんじゃないの! 湊由里香がいないんじゃ私がここに来た意味ないじゃない!」
華菜が一人取り乱す。教室内からは華菜への冷たい視線が集まっている。
「そもそも湊由里香って誰か知らないし。」
教室のどこかからボソッと声が聞こえた。
「なんで知らないの? あの湊由里香よ!」
「どの? ……」
また別の声が静かな嘲笑に混ざって聞こえてくる。
今、教室内が華菜を異分子と認識することで一体化しようとしている。
華菜も薄々その事実に気づきつつあるが、今は湊由里香がこの学校にいないかもしれないという衝撃的事実への心配の方が圧倒的に脳内を占めている。
「ああ、もういいや」
そう言い残して華菜は教室の外に飛び出した。
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