第10話 交渉失敗

7/11
前へ
/717ページ
次へ
「湊由里香は絶対に野球部に入れます」 今日一番はっきりとした声で返答ができた。華菜自身が驚くくらい冷静な芯の通った声で。 ここでごまかして逃げてしまうと、由里香や生徒会長に対して戦わずして負けた気分になってしまう。それに一緒に頑張ってくれている千早や相談に乗ってくれた美乃梨に申し訳が立たない。 突然しっかりとした受け答えをした華菜に対して生徒会長がほんの一瞬だけ驚いて目を見開いた。一矢くらいは報えたのかもしれない。 生徒会長はすぐにまた元の冷たい視線に戻る。 「湊さんをあなたの自分勝手な都合で野球部に加入させて振り回すということですか?」 「別にそういうつもりは」 「あなたがどう思っていようと湊さんを野球部に入れるということはそういうことなのですよ?」 「最終的に野球部の部員を集めて湊由里香を誘ったうえで断られたらもう諦めます。少なくとも今の湊由里香の野球に対する気持ちもわからないまま諦めるのは嫌です。やれるべきことはやっておきたいんです」 「気持ちがわからないまま諦めるのが嫌? あなた一体何様のつもりなんですか?」 生徒会長の話し方がどんどん感情的になっていく。
/717ページ

最初のコメントを投稿しよう!

68人が本棚に入れています
本棚に追加