第10話 交渉失敗

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「よりによってあなたにヒロイン面されたら由里香も不愉快極まりないでしょうね」 由里香の呼び方が”湊さん“から”由里香“に変わっていた。学校の生徒会長としての立場ではない、私情を挟んだ言い方で、明らかに知人として由里香のことを呼んでいるように聞こえる。 しかもその言い方は由里香と親しい者としての立場から、華菜のことを糾弾しているみたいだった。 「生徒会長は湊由里香のお知り合いか何かなんですか? 同級生という関係以外の何かがあるんですか?」 「私と由里香の関係性? 絶対あなたには言いたくありません」 生徒会長の言い方は“関係がある”と答えているも同然だった。 「そんなことよりも、あなたはどうして由里香が野球をやめたか分かったうえで、図々しくもこの場に野球部の申請をしに来てるのですか?」 「わからないんでそれを確認したいんです」 華菜は努めて冷静に答えた。 先ほどまでの冷静な生徒会長には何を言っても軽くあしらわれるだけだったが、今の感情的になっている生徒会長になら隙を突けばうまく野球部の承認をさせられるかもしれない。 「あなたには絶対あの子に関わらせたくないです。なんせあの子が野球を止める原因を作ったのはほかでもない小峰華菜、あなたなんですから!」 「私のせい?」 生徒会長から予想していなかった言葉が飛んできた。華菜の視界がぐらりと揺れた。
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