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「私が湊由里香に何かしたんですか?……」
だんだんと華菜の声に元気がなくなってくる。
「さっきの話はもう忘れてください。少なくともあなたが何も関わらなければ、湊さんもあなたのことをわざわざ責めたりはしないと思いますので」
「責めるとか責められないとかの問題じゃないです! 由里香さんが大好きな野球から離れる原因を作ったのが私にあるんだったら野球部に入ってもらうとかの話以前に謝らないと……」
華菜の目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
挑発とか呼びかけの意味を込めていた“湊由里香”とフルネームで呼ぶ呼び方も、もう意味がない。
ずっと由里香は自身の都合で野球を止め、その理由は華菜とは全く関係ない事だと思い込んでいた。
だから華菜が説得し、奮起を促すことで由里香も自信を取り戻して野球をまた始めてくれると思っていた。
それなのに華菜のせいで止めたとなると話は変わってくる。
華菜が由里香を野球から遠ざけたのに、再びその由里香に華菜が野球を始めるように促すなんて自作自演以外の何物でもないのではないだろうか。
華菜の頭の中に様々な感情が渦巻いていく。
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