6人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
娘からのプレゼント
「ただいま」
私は玄関を開き、明かりを点けて一声かける。
誰も私の声に答えてはくれない。まあ無理もない。今は午後十時で、小学四年になる娘は眠りについている時間だ。
私が声をかけるのも日々の習慣である。
私は仕事で朝から晩まで働いており、中々娘と一緒に時間を過ごすことができずにいる。クリスマスである今日も出勤で、娘には一人で寂しい思いをさせて申し訳ないと感じている。主人は単身赴任でいない。実質上私一人で娘の面倒を見ている。
私はリビングに行き荷物を下ろした。
「ん?」
テーブルの上に見慣れない箱があり、私は気になったので手に持った。
『ママへ』
と箱の上にあった小さな紙が私宛に書いてあった。娘の字である。
私は箱の梱包をほどくと、ハンカチと共に、折り畳まれた紙が添えてあった。
私は紙を開いた。
『お仕事お疲れ様、今日はクリスマスだからママにプレゼントをするね、気に入ってくれると嬉しいな、あまり無理しないでね』
娘の心暖まる言葉に私の目元が熱くなった。このハンカチは私が与えているお小遣いを貯めて買ったのだろう。ここ最近は休日に買い物に連れ出しても好きなお菓子を我慢していたように見えた。私にプレゼントを買うためだったのだ。
娘の健気な努力に私は感動した。私は目元を指で拭った。明日は休みなので一日遅くなったが娘のために盛大にご馳走を作ろう。
私は決意を胸にして就寝の準備を始めたのだった。明日の娘の笑顔を見るために。
最初のコメントを投稿しよう!