博士が愛した依存

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俺は屋上で風に当たりながら、煙草を吹かす。 真白は煙草が嫌いだと言っていたが、煙草に頼らなければ、俺はもう生きていけないような気がした。 「ふー……」 口から白い煙がため息と共に出る。空はどんよりと曇っていた。 「博士……」 俺は振り返ると、弱々しく歩く柳楽の姿があった。柳楽は涙の痕を頬に貼り付けながら、俺の隣に立つと頭を下げる。 「すみませんでした、俺……」 「いいよ。俺も感情的になっちゃったし。お相子」 俺は煙草を吹かしながら言うと、顔を少しだけ上げた柳楽が下唇を噛む。 「なぁ、柳楽」 「はい……」 柳楽は背筋を伸ばして、俺に返事をすると、俺は煙草の煙を吐いて、踏みつぶして火を消した。 「どうして俺は、真白そっくりのロボットじゃなくて、インターネットに繋がないと稼働されないオンラインの、ホログラムの真白を作ったと思う?」 「え……」 「今よりしちゃうからだよ」 俺は煙草の吸い殻を地面から拾うと、火が消えていることを確認して、ポケットに常備しているビニール袋の中に入れる。 柳楽は俺が言ったことに、きょとんとしながら眺めていた。 「俺は依存してる。もうこの世にいない真白に。ホログラムの真白に。でも、もし俺が真白そっくりのロボットを造りだしていたら、俺はきっと」 俺は曇ってる空をじっと眺めながら、言葉を続ける。隣では柳楽が何も言わずに、じっと俺の話に耳を傾けていた。
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