博士が愛した依存

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「ロボットは、形があるから触れられる。でも、ホログラムは俺たちが見えているだけで、その映像自体に触れることは出来ない。だからロボットは造らなかったんだ」 「……好んで、ということですか?」 柳楽が恐る恐るといった様子で俺に言うと、俺は頷く。 「そうだよ。、触れられない真白を造った」 「どうして……」 「さっきも言った通り、依存しちゃうからだよ。触れられたら、もう存在しないのに、生きているように思えちゃうから。触れられない存在じゃなきゃ、これぐらいの距離感を保たないと、俺はずっと彼女の死を受け入れられないでいるからさ。だから俺は、触れられないホログラムの真白を造った。オンライン状態のままだけどね。でも、いつでも俺はオフラインに出来る。そんな存在を造ったんだ」 柳楽が悲しそうに俺を見ると、俺は「そんな目で見ないでくれ」と言う。柳楽は俯いて足元を眺めると、俺はニコッと笑った。 「柳楽がそうは思わなくても、俺はだよ。真白は死んだ。もう、いない。今でも信じられないよ。会社帰りにトラックに轢かれたって聞いた時、何も考えられなかった。それから、すぐだよ。医者から死亡宣告をされたのは。まだ結婚して1か月も経ってなかった。結婚式も挙げていないし、新婚旅行にも行けてない。それなのに、死んだんだ……」 俺はまた溢れ出そうになる涙を堪えながら、一本煙草を取り出して、ライターで火をつけた。柳楽がそれを隣で眺めながら、「泣いていいんですよ」と小声で言った。 「感情は我慢しない方がいいです。特に涙は、我慢し続けたら簡単に壊れますよ」 「人間は見かけによらず脆いからな……。よく、知ってるよ」 俺はふーっと煙を吐き出すと、柳楽が俺に配慮しているのか視線を反らす。俺はそれを見て、煙草を持っている右手を柵に下ろした。
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