博士が愛した依存

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「ただいまー」 「お帰り」 玄関先で、真白が温かい笑顔で俺を出迎えると、俺はもう一度「ただいま」と言って、靴を脱ぐ。 「元気、ない?」 俺は前に進めていた足を止めると、振り返る。真白が心配そうな表情をして、俺を見ていた。俺は首に手を当てると、「元気だよ」と言う。それを見て、真白がムッとした。 「嘘」 「嘘じゃないって」 「将暉は嘘を吐くと、いつも首に手を当てるんだよ」 俺は数回瞬きをすると、「まじ?」と言う。真白が何度も頷いて、俺は苦笑を浮かべた。 さすが、と言うべきだろうか。 「奥さん、舐めるなよ?」 真白がニヤッとすると、俺は「参りましたー!」と言う。真白がドヤ顔をすると、リビングへと一緒に向かった。食卓の椅子に座ると、真白が目の前に座る。 「それで、何があったの?」 「んー……」 俺は椅子の背もたれに体重を預けると、じっと真白を見る。 所々、真白を眺めながら、少し悲しくなった。今日、柳楽とこのことについて話したからだと思う。 「幸せって、何だろうって思って。それで、考えすぎてちょっと元気なかった」 「わー、哲学的」 真白が難しい表情をすると、しばらく考え込む。その姿を眺めながら、俺はこれもAIが考えた、最適な台詞、表情、動作なんだろうなと思う。本当に、真白が生きていてもやりそうだ。 「んー、私は将暉みたいに論理的なこととかは言えないけど。私は、幸せって誰かを全力で愛せることだと思うな。その人がいなくなっても、愛し続けることが出来るって、周りから見たら悲しいと思われるかもだけど、当人にとってはすごく幸せなことだと思う」 俺は微笑を浮かべると、「俺もそう思う」と言った。その言葉を聞いて、真白がパッと笑みを浮かべた。
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