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「ていうか、構造まじで複雑ですね」
俺が最近発表したメカの第二号を発明している最中で、柳楽が大変そうに言う。暑くて、汗が額からにじみ出ていた。それもそうだ。どんなに寒い真冬でも、これほども近くではんだこてを使って、メカを作っていたら、汗だくにもなる。
「博士、やっぱさすがです。これ、いつぐらい前から構造があったんですか? こんなのすぐに思いつけるもんじゃないですよ」
「んー、5年前かな。具現化するまで、4年かかった」
「やっぱそれぐらいの時間が掛かりますよね」
柳楽が肩を切るように息を吐くと、俺は優雅にコーヒーを飲む。それを見て、柳楽が呆れたような眼で俺を見た。
「何?」
「博士もやってくださいよ。発表したのはいいけど、俺しか助手いないんですからね? 俺だけじゃ、完成しませんよ」
「分かってる。これ飲んだら、交代しよう」
俺は残りのコーヒーを胃に流し込むと、専用のマスクを俺に渡した柳楽が疲れたように横になる。俺は「お疲れ」と一言言って、柳楽が座っていた席に着くと、マスクを被った。
「にしても、このメカは本当に人を幸せにするんでしょうか……」
「幸せ?」
横になった柳楽が天井を見上げながら言うと、俺は耳を傾けながら、はんだこてを慎重に扱う。
「だって、これは確かに死んだ人を蘇らせるのと同じ原理です。ちょっと違うだけで、基本は同じです。でも、それは本当に当人にとって幸せになるんでしょうか?」
「当人にとっては、幸せだよ。周りから見られたら、そうじゃないかもだけどさ」
俺ははんだこてを立てて、マスクを外すと、柳楽がじっとこちらを見ている。
「確かに目の前に、その人は存在しない。もう死んでしまっているからね。だからこれは幸せなんかじゃない、という人も多くいるよ。でも、悲しみを埋めてくれる」
「このメカは、当人の記憶の中からAIが投影される人を分析して、分析結果を元に、AIが考えた最適な台詞と表情、動作が、3Dホログラムとして投影される。インターネットに繋いで稼働されるオンラインメカです。オフラインになれば、その人は目の前から消える。それにホログラムだから、触ろうと思っても触れない」
「そうだよ」
俺はまたマスクを被ると、作業に戻る。たった2人しかいない、部屋の中は、どうも虚しいぐらいに広く感じた。
後ろでは、まだ納得がいっていない様子の柳楽が俺をじっと見ているのが背中越しで分かる。俺はそれに気づいていないふりをしながら、はんだこてを慎重に扱った。
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