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ただの夢
「オラッ!」
あれからというもの、伊木は夜になっては寮から出て、出来るだけデッドを殺している。そして、左腕に体液を大量に吸わせている。
ずっと吸わせ続けていると、伊木の事を信用したようで、一体感が生まれた。
前は動かそうとしても、勝手にデッドの気配を探知してデッドの方に行こうとしたり、戦っているのに左腕の制御を奪って自分で戦ったりしていた。
しかし、今は勝手に動くことはなく、大人しく俺に使われている。
「今日はここまでだ。いいな?」
左腕に聞いても反応がない。これは了解という意味だ。殺し足りない時は、また勝手に動き出すのだ。
「結構吸わせたな」
殺したデッドの数は計り知れない。体液も大量に吸わせている。しかし、このままでいいのか?
「考えていても仕方ないな」
そのまま寮に帰り、自分の部屋に行き、ベットに横たわった。デッドを殺して回っていたこともあり、疲労困憊ですぐに寝てしまった。
「こ、ここは...」
気付くと真っ暗な空間にいた。今立っている地面も見えないぐらいの暗闇だ。
「おいお前」
「うわっ!!」
闇の先からいきなり声が聞こえた。
「だ、誰だ!!」
「俺は、お前の左腕にいる者だ」
今確信した。風間はあの弾丸に、『とあるデッド』の体液を入れたと言っていた。つまり、こいつがそうなのか。もっとも、暗闇で見えないのだが。
「そのデッドがなんの用だ!」
「ふん、デッドか。俺はその名が嫌いだ」
「嫌い?なんのことだ!」
「その答えは、お前がこのまま生きているだけで、そちらから来る」
「なんだと?おい待て!まだ聞きたいことが!」
「またそのうち、お前が死に近付いた時に」
その何かが暗闇に飲み込まれたそこで目が覚めた。外はもううっすら明るくなっている。
「俺が、死に近付いた時、死にかけた時」
包帯を外して伊木は自分の左腕を見た。そいつは、いつもより脈打っているように感じた。
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