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初の捜査
夜、暗い路地。そう聞いて不気味なイメージを持たない人間はいないだろう。ここにいる男性は、正に、その不気味なイメージの暗い路地にいる。
「や、やめてくれ...頼む、俺には妻と二人の子供が」
「へぇ、君、面白いね。自ら血縁関係を明かすなんて...君を殺した後に、その人達も殺しちゃおう」
追い詰めている方の男の体は、人間の形を留めてはいたが、その色や模様は、まるで、怪物のようだった。
「ひ、やめ...」
自分が死んだ後に家族も殺される。その道を選んだのは自分だと、男は後悔した。
-翌日-
路地で殺人事件が起きてから約八時間後、スターポリスが現場に駆け付けた。
「ごくろう」
スターポリスの制服はスーツの様なもので、後に星が縫い付けられる腕章が目印だ。スーツの下には、いついかなる時にデッドに遭遇しても全力で戦えるように、特別な生地で出来た運動着と、パワーベルトがつけられている。
「こりゃ、ひでえな。上半身下半身真っ二つだぜ」
今到着した松谷 茂樹(マツヤ シゲキ)12星は、デッドの仕業であろう死体を見て、顔をしかめた。
「おい新人、これどう思う?」
その場には、今年スターポリスになった伊木、川瀬が研修を兼ねて捜査に参加していた。川瀬はさっきから嗚咽を繰り返しているが。
「そうですね、普通のデッドであればこんなに器用な殺し方はしないと思います」
「ほう、『普通の』デッドではないのか」
普通の、を強調して言った松谷に、伊木は答えた。
「はい、デッドは、エンドの実験によって生まれた怪物です。その過程で変異種が出てきてもおかしくはないかなと」
「なるほど、参考になった。そっちの体調不良ボーイは?」
早速あだ名をつけられた川瀬は、体調が悪いなりに必死に答えた。
「自分も...伊木と...同意見...ウェぇ...」
「わかったわかった、ちょっと落ち着け。ここから離れるか」
川瀬の体調を心配した松谷は、伊木も連れて、現場を後にした。
-河原-
「ふう、あんなにグロいとは...」
「スターポリスもやっていることは、かつての警察官となんら変わりない。ただ、デッドと戦うってだけだ」
タバコを2本同時に吸いながら、松谷は言った。とても不健康そうだが、本人曰く『デッドと戦う時以外しか吸わないから大丈夫』だそうだ。
「それにしても、妙な殺され方でしたね」
「ああ、今後はお前の考察の線で捜査を進めようと思う」
松谷は吸い殻を地面に落として踏みつけ、ポケットに手を入れた。
「じゃあ、自分達はこれで」
「おう、また一緒に捜査出来るのを楽しみにしてるぜ」
「はい!ありがとうございました!」
「ありがとう、ございました...」
その後伊木は、川瀬と一緒に寮へ戻った。川瀬を一人にしていたら、あの死体を思い出して、また体調が悪くなってしまうかも知れないと思ってのことである。
「川瀬、しっかりしろよ」
「お、おう...」
その瞬間、すこし距離が縮まった気がした。
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