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護衛対象
「この子達が、護衛対象よ」
託児所のような施設に塩路 鈴音(シオジ スズネ)9星が連れてきたのは、二人の兄妹だった。
「こちらはお兄ちゃんの後藤 明(ゴトウ アキラ)くん13才と、妹の琴葉(コトハ)ちゃん7才よ」
「よ、よろしくね」
兄の明は状況を理解しているらしく、ポケットに手を突っ込み、暗い顔をしていた。
一方妹の琴葉は、親がいないことに不安を感じていた。本当のことを言えば、絶望するに違いない。小学生ということもあり、両親は仕事でしばらく帰ってこれない、と説明したらしい。
「ねえ伊木くん、ちょっといい?」
塩路は伊木を廊下に連れた。
「なんでしょう?」
「この子達は今、家にいることになってるの。だから、デッドが来るとすればその家。そこで、デッドが来たら実力者達で叩こうって寸法よ。ここにデッドが来ることはまずないから、安心して護衛しなさい」
「...なんで護衛を?つける必要はないでしょう?」
塩路はがっかりした様子で肩を落とした。そして伊木の方を向き、とても真剣に話しはじめた。
「もしも、もしもよ?デッドがその作戦をよんで、この子達の所に真っ先に来たら、あっという間に殺されるわ。その時の為の...えっと...なんて言ったらいいのかしら」
「...時間稼ぎの為の肉壁...ですよね」
塩路は違う、と言いかけたが、その言葉を無理矢理飲み込んだ。
「そう...ね。頼んだわよ」
「はい」
これが最後の任務になるかも知れない。伊木はスーツのネクタイを改めて絞め直した。
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