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明の相談
護衛と言っても、普段は二人の面倒を見るだけなので苦しさは感じないが、二十歳を越えた伊木が、琴葉の小学生ノリについていくのは大変だった。
「ここがおしろでね?ここが森なの!」
「へ、へー。そうなんだ...」
積み木で琴葉に対応していると、兄の明が伊木の背中を叩いた。叩いたといっても殴るような強さではなく、呼ぼうとしている強さだった。
伊木は琴葉に大人しくしているように言い、一人で遊ばせ、明についていった。
明に連れられたのは、さっき塩路と話した廊下だった。
「なあ、警察。俺の父さんと母さん、死んだのか?」
「...ああ、残念ながら」
「...なんでだよ」
「...警察が、無力だからだ」
そう、警察は無力だ。伊木は上官が逃げ続けているのを知っている。同僚が隠れているのも知っている。
だが、これも知っている。勇敢に悪に立ち向かう警察がいること。
「だけどな?警察は無力だけどな、無力なりに頑張る人だっているんだ」
伊木や、仲間達の為に、肉壁になってくれた皆。命を張って、デッドを殺す者も。それは、英雄の姿そのものだ。
「その人達の頑張りを、認めてほしい。こんなことを言える立場ではないけど」
すると明は形相を変え、伊木を睨んだ。
「もしも!俺の妹も守れなかったら、お前を殺す!」
兄はその立場上、ストレスが溜まる。長男であり、家族や親戚からのプレッシャーにより、反抗してしまうケースが多い。その怒りの矛先が妹に向くこともある。
だが、明は妹をまもることに必死になっている。これが、両親、大事な人を無くした者の強さである。
「ああ、命を張って守り抜くさ」
そのとき、琴葉がいる部屋から大きな音が聞こえた。
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