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訓練の場
数年後、俺は親父に憧れて、スターポリス養成学校に進学した。初日の訓練には、あの有名なスパルタ教官、有野 勇一がついた。
「いいかお前ら!スターポリスは星が多けりゃ多いほど給料が上がり、信頼も厚くなる。信頼される警官になりたいなら、今死ぬ気になって訓練しろ!返事!」
「「はい!!!」」
「威勢がいいな!早速だが、さっき説明したコースを20分以内に3周してこい!時間が過ぎれば夕食はパンと牛乳のみだ!!それでは走れ!!」
教官の罵声と共に、訓練生達は一斉に走り始めた。
10分程経てば、バテバテになり、ランニングのようになるやつもいる。
しかし俺は違う。親父に憧れて体を鍛え上げ、体力をつけた。この訓練が来ることも、大体予想していたのだ。
「一着、11分12秒!」
俺の後に続いて、訓練生がゴールし始めた。
「二着、11分31秒!三着、11分33秒!」
20分近くになり、訓練生が集まってきた。しかし、最初と明らかに数が違う。
「20分経過!これから先にゴールした者は、夕食をパンと牛乳のみとする!」
教官がそういうと、もう少しでゴールだったやつが絶望していた。
「う、嘘だ!!教官!あと1歩ですよ?!」
「うるさい!夕食抜きにされたいのか!」
「す、すいません!!」
これは流石にやりすぎだ。スパルタっていっても限度がある。ほぼゴールみたいなものだろう。
「有野教官、その訓練生はゴールしています」
「なんだと?貴様も私に刃向か...うっ」
有野は振り返り、俺の顔を見たとたん、顔が真っ青になった。俺が星20の息子と知っているからだろう。簡単に口出し出来ないのだ。
「...ああ、私の見間違いだ。すまなかった」
「え?いえいえ!頭下げないでください。申し訳なくなっちゃいます」
初日の訓練はそれで終わった。
-食堂-
訓練生達は二つに別れていた。20分以内にゴール出来た者と、出来なかった者だ。
「...ねぇ、ねぇ」
「ん?お前は」
俺に話しかけた向かいのやつは、もう少しのところでゴール出来なかったやつだった。
まあ、俺の計らいでゴール出来たのだが。
「えへへ、さっきはありがとう。あのままだったら、僕、お腹が空いて死んじゃったかもしれない」
「ふん、大袈裟だな。そんなんで死ぬ訳ないだろ?」
「うん、それもそうだね。ねぇ、食べ終わったら僕についてきてくれない?お礼がしたいんだ」
「いや、別にそんなのいいよ」
「まあそう言わずに」
礼は受けるに越したことはない。俺はそいつの話にのった。
-食事後-
もう夜になった外に連れ出された。春でも十分寒い。
「んで、お礼って?」
「まあ、まずは自己紹介から。僕は辻 木乃香(ツジ コノカ)。いつももうちょっとで終わっちゃうっていうダメなところがあるんだけど、よろしく」
名前的に、女だったのか。中性的な顔立ちをしていて、どちらか分からなかった。
「ああ、俺の名前は」
その瞬間、俺は悲壮な現実に引き戻された。
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