死後

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死後

ここは?俺は死んだのか。ということは、ここは、天国? 「目が覚めたか?」 「...お前は?」 「俺か?俺はエンドの元研究員、風間 陸(カザマ リク)だ。よろしくな」 「エンド...」 その名前を聞いた瞬間、体が勝手に動いた。風間の白衣の胸ぐらを掴み、引き寄せた。 「テメェ!!お前らのせいでどれだけの人間が死んだと思ってる!!」 「おい落ち着け。お前の体はまだ安定していない」 「は?」 伊木にはその言葉が理解出来なかった。伊木は、死んだはずだ、なんで体があって、意識があるんだ、と疑問に思った。 「お前、自分が死んだことを思い出したのか?」 「ああ、てことは、ここは死後の世界ってことか?」 「はぁ...じゃ俺は閻魔様か?そんな風に見えるか?閻魔様は白衣を着てるのか?」 「じ、じゃあ、ここは?」 伊木は回りを見渡した。見たところ、病院の手術室のような感じだ。伊木はベッドの上にいる。手術台とも言えるような見た目をしているが。 「俺の研究所だ。エンドがデッドに潰されてから、俺はここで研究を続けている」 「潰された?いや、そんなことは後だ!俺はなんで生きてるんだ?お前が治したのか?」 風間はタバコに火をつけ、壁に寄りかかって煙を吐いた。 「いや、お前は死んだ。だが俺が、数時間前のお前のクローンを作ったんだ」 クローン。伊木はその言葉を小学生のころから知っている。細胞を使って同じものを作る技術だ。 しかし、人間のクローンは今だ出来ていない。倫理的な問題もあるが、それ以前に成功するかも分からないのだ。 しかも、今の伊木が数時間前のクローンだとするならば、なんで伊木は伊木が死んだことを知っているのか。今の伊木はもうオリジナルではないのに。 「今お前、なんで俺は俺が死んだことを知っているんだ、と思っただろう?」 手に持ったタバコを伊木の方に向けて、風間は言った。 「ああ、なんでなんだ?」 「わからん」 風間はタバコを近くの灰皿に入れ、伊木の隣に歩いてきた。 「ただ言えるのは、お前は死んで、俺がクローンとして再び誕生させた。お前の体が出来たのが昨日だから、お前の誕生日は昨日になった。おめでとう」 「...俺が、死んで、クローンになった。オリジナルの俺は、もういないのか」 絶望した。親父に撫でてもらった頭も、母親と繋いだ手も、もう無い。 「...お前、デッドに復讐したいか?自分の大切な体を傷つけ死なせた、デッドを殺したいか?」 伊木が言う答えはひとつ。たったひとつだ。 「...ああ、デッドを皆殺しにして、恨みを晴らす」 「ふむ、じゃあ俺も協力しよう。デッドを皆殺しにしてくれるんならな」 すると風間は部屋を出た。しばらくすると、風間はリボルバーを持ってきた。 「お、おい、お前何を」 「恨みを晴らすんだろ?だったらそれ相応の力がないとな。少し苦しいが、我慢しろよ」 風間はリボルバーに謎の弾丸を込め、伊木の左腕にあてがった。 「お、おい!!止めろ!!」 逃げようとするが、出来上がったばかりのクローンは力が弱く、風間の胸ぐらを掴んだ時点で、もうエネルギーを使い果たしたのだ。 「頑張って適応しろよ」 「うわぁーーー!!」 奇妙な銃声と共に、伊木の意識は飛んだ。
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