言わなきゃわかんない。

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「壱哉に何言われたわけ?」 何って・・・・ わたしは、口を尖らせて ちょっと視線を落とした。 「・・・なんか、 だって、朝葉ちゃん、 企画投げ出して部署異動 したいって言ってるのに、 それなのに、 鳳さんは、朝葉ちゃんの 見えない努力を評価したい って言ってて、 いや、 甘くない?みたいな・・・ ていうか、努力してる っていうけど、 え、なにそれ、 だって、朝葉ちゃん 全然電話取ってないし、 企画だって全然 発表してなかったし・・・」 納得、いかない なんで、企画投げ出そうと してる朝葉ちゃんが、 評価される? わたしが麦茶の入った グラスを指先でコツコツ つついていると、 烏丸さんは静かに笑った。 なにさっ。 「なんで笑うんですか、」 「松嶋ちゃんは、見えない 努力は評価しない?」 「はい?」 いや、知らんがな、 こんな話初めてしたし。 わたしが顔をしかめて いると、烏丸さんは膝で 頬杖をついてこっちを 見てきた。 「前さ、おじょーちゃんが 鍵とか財布とか会社に 忘れて、土曜日に一緒に 出社したことあったじゃん。 そんとき、 俺に言ってなかった? 俺がチャイ語教室に 通ったり、夜に自己啓発の 本読んだり、休日に出社 して仕事したりしてんのを 見て、 みんなが見てないところで すごいですねー、って。 でも俺は今んとこ、 鳳に出社じゃ遅れを とってるし、 結果に結びついてるか って言われると、 まー、微妙ですよ。 でも、おじょーちゃんは 褒めてた。」 あ。 わたし、目をぱちくり。 そういえばそんなこと あったわ。 固まるわたしを見て、 わたしがそのくだりを 思い出したと判断したらしく、 烏丸さんは続けて口を 開いた。 「そーゆーのと 一緒なんじゃねーの? 俺の時は褒めてくれたのに、 杉原さんはダメ?」 「いや、そういう わけじゃないですけどっ、 なんていうのかなっ、 ていうか、烏丸さん、 会社は結果を出さなきゃ 意味が無いって言ってた くせに、」 わたしが慌てて 言い返すと、烏丸さんは 「は?」 って、半笑いでこっちを 見てきた。 「いや、おじょーちゃん、 あんときのお前の仕事に 対する意識、糞酷かった からな? そーゆー言い方して 発破かけとかねーと、 使えねーOLまっしぐら だったじゃん。」 グウの音も出ねぇええええええええええええええええええ あの時のわたし、 仕事とか 別にどうでもよくて、 いかに手っ取り早く男を 捕まえられるかしか 興味なかったからね!! うん、クソだね!!!!! ・・・・まあ確かに、 あの時も、烏丸さんは、 頑張りも評価はするって 言ってたけど・・・ わたしは決まりが 悪くなって、烏丸さんから 視線を外した。
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