0人が本棚に入れています
本棚に追加
一律一家は山登りを楽しんでいた。好奇心が旺盛な5歳の少女、綾芽の視界に複数の足跡が入った。
両親は段々歩みが遅くなる綾芽に気づかず先を行く。
気づいた時にはもう綾芽の姿が見当たらなかった。急いで名前を呼び探しまわった。
綾芽は足跡を追い徐々に登山道から外れていった。しかし本人はどこに続くかわからない足跡に興味深々だ。
「足跡の主さーん。どこですかー」
楽しそうに足跡を追う。
足跡は川で途切れていた。
そこにいたのは野犬の群れだった。
「あなたたちが足跡の主さん?」
野犬の事を知らない綾芽は近所の犬と接する気持ちで野犬たちに近寄る。
野犬たちは唸り声をあげると綾芽は怯えた。
すると後の方にいた一番大きな野犬が前に出て綾芽に地近づく。
泣き出しそうな綾芽をその大きな野犬は優しく頬を舐めた。
それはまるで子をあやす親のようだ。
綾芽を探す両親はとある事を思い出す。
「そう言えば、この辺だったわね」
「あぁ」
二人は母が妊娠する前、今回と同じ山を登った。その時どこからともなく悲しそうないぬらしき鳴き声が聞こえた。
二人は気になり声の主を探すと、そこには罠に足を取られた犬がいた。
二人は罠から犬を助け応急処置をし動物病院に連れて行った。
「あの犬、おうなったんだろうね」
「さぁな。飼い主でも見つかってるだろ」
綾芽は大金きな犬と行動を共にしていた。
「パパー!ママー!」
大きな犬の後ろには野犬たちがついて歩く。
人道から離れた子供の声はあまり大きくなく気づく人はいなかった。
日も傾き始め不安と恐怖でいっぱいになった綾芽は泣き始めてしまった。
そんな綾芽を大金犬は心配そうに見、遠吠えをする。
その声は大きく山一面に響いた。
「今のって、犬……?狼……?」
「分からない。あっちの方から聞こえたぞ」
「早く綾芽を見つけなきゃ」
そう思い力を振り絞り大きな声で名を呼ぶ。
大きな犬は耳をぴくりと動かし綾芽を背中に乗るよう促し綾芽が乗ったと同時に走り出した。
「綾芽……」
ぽつりと呟くと人道ではない方向から何かが来るのを感じた。
目をこらし見ると大きな犬とその背中に綾芽が必死にしがみついていた。
「綾芽!!」
「パパ!ママ!」
大きな犬は二人の前で止まり二人を見る。
三人は喜び大きな犬を見る。
「野良犬……?何で……?」
両親は頭を抱えていると大きな犬はどこかへ行ってしまった。
それからしばらくし、とあるユースが流れた。
「いやぁ〜、まさか野犬がいたなんてね。夜に遠吠えが聞こえてびっくりしたよ〜」
マイクを向けられ答える人。
それは山にいた野犬たちが保護され飼い主が見つかったというもので飼い主は山を所有している人で散歩は山でしていると言うものだった。
「あ、この犬綾芽を連れてきた犬じゃない?」
犬達は足あとを沢山つけ、楽しそうに飼い主と一緒に山を駆け回る。
その姿を見て家族は安堵した。
最初のコメントを投稿しよう!