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第10話 はじめてのギルド
ギルド。冒険者が集いし場所。
本来の言葉は中世で「組合」みたいな意味だったと思う。ゲームの世界ではすっかり「冒険者が仕事をもらう場所」となっている。
ギルドの場所が現実では「ハローワーク小豆島」というのは、アレンジしたAIに拍手したい。たしかに内容が似てるわ。
何年前に来たのか忘れたが、道は覚えていた。
ここも銀行と同じで、外観の形は同じ。ただし石造りに変わっている。まわりの建物が小さめなので、大きな二階建てのギルドは目立っていた。
入り口はガラスの自動ドアではなく、重厚な木の扉になっていた。こういう重そうな扉ってのは「一見さんお断り」という圧力を感じる。
生まれて初めてのギルド。ちょっと緊張して扉を開けた。
ありゃ。ロマンあふれる場所かと思ったら、さきほどの銀行と同じような雰囲気になっててがっかり!
大きな部屋になっていて、真ん中をカウンターで区切られている。その向こうは机が並び、熱心に仕事をしている人たちがいる。ギルドの職員だろう。
がっかりしたが、間違いなくギルドだ。窓口で話している男、壁際の集団、いるのは冒険者ばかりだ。剣、槍、弓など、それぞれ武器を装備している。
それに、ただよう雰囲気が荒くれっぽい。不潔っぽいのも特徴かな。
室内と見まわすと、壁に羊皮紙がびっしり貼られていた。これが依頼だな。依頼人の名前や内容、それに報酬額が書かれている。
星のマークがあるのに気づいた。これは難易度か。一つから三つまである。上限が三つなのか? いやいや、ここは田舎だ。大きな街に行けば、もっと上の難易度があるかもしれない。
依頼書が多すぎて、これは探すのが大変だ。窓口に行って聞いてみる。
「あのう、すいません」
カウンターに並ぶ職員の内、空いていたおばちゃんに声をかけた。
「冒険者証を」
「はっ?」
冒険者証? 初めて聞く単語だ。
「持ってないのなら、オリーブン城で冒険者申請して下さい。それがないと、ギルドは使えません」
にこりともしない窓口のおばちゃん。本物の小豆島ハローワークは、もっとほがらかだ。
まあしょうがない。オリーブン城とやらの場所を聞いた。
なんだ、役場かよ。島の反対側だ。面倒くせー。
島の反対側まで歩くことを考えると億劫になったが、仕事をもらわないとカネが無い。
ギルドを出てトボトボ歩いていると、道の脇に並んでいる人を見つけた。先頭には、木の立て札がある。
近づいてわかった。路線バス、いや、路線馬車と言うべきか。料金は安い1G。これなら乗る。
立て札はあちこちにあった。なるほど、ここはバスターミナルならぬ、馬車ターミナルなのか。
城の方向へ行く馬車停を見つけ、待っていると馬車が来た。二頭立ての馬車で、荷台の両側に座るための木の板が設置してある。屋根はなく、ボロさは行きがけのロバと変わらないが、十人は座れそうだ。
んじゃ、オリーブン城とやらに行ってみますかね。名前は大層だが、どうせ役場だろ。
人生初の「リアルな城」に行くわけだが、なんともテンションが上がらない。
おれは面倒臭さに腹を立てながら、馬車に乗り込んだ。
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