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第8話 西の港町へ
翌朝、夜明けとともに目が覚めた。
起きてみても、やっぱりこっちの世界か。目が覚めたら向こうに戻ってるんじゃないかと、少し期待していた。
ただ、帰りたいのかといえば、自分の気持がよくわからない。帰れなかったら困る。でも異世界を見るチャンスなんて、そうそうない。もう少し見てまわりたい! という思いもある。
しっかし、家の中に生活するための設備がまるでない。顔を洗いたいが、洗面所すらない。
そう思っていると、外から声が聞こえた。窓はあってもガラス戸はない。木戸はあるが、閉めると暑いので、開けっ放しで寝た。なので外の声は丸聞こえだ。
隣の家族が、道沿いに流れる小川で顔を洗っていた。まじか。そういうのはリアルに中世的にしなくてもいんじゃないか? AIさんよ。
とりあえず、腹が減ったので「おにぎり」を食べることにする。
食べる前に自分のパラメータを確認した。
体力:99
元々の体力は100だった。1減っている。空腹が続くと体力は削られるのか。
これで「餓死する」という設定もあることがわかった。なかなか面倒だな、このゲーム。
とりあえず今日の予定は、銀行、じゃないや両替所に行き水晶をお金に替える。その後、武器屋で武器を買う。デフナッシーを一撃で倒せるように、攻撃力が+10以上の武器を買わなければならない。
それからやっとギルドに行き、氷屋の依頼を受ける。という流れか。
ギルドの場所は氷屋のオヤジに聞いている。ハローワークがあった場所だ。現実の世界ではハローワークがあったのは「土庄町」になる。岡山と香川からのフェリー乗り場があり、小豆島でも栄えていた地域だ。
同じ土庄町に、香川銀行小豆島支店もある。そこが両替所なので、一度に用事は済む。でも、土庄町まで歩くって。なんだかなぁ。やっぱり車って便利だったんだなぁ。
ぼやいてもしょうがないので、家を出ることにした。踏み固められた土の道を歩く。
カッポカッポと後ろから音が近づくと思ったら、荷車をひいたロバだった。麦わら帽子をかぶった、じいさんが乗っている。
道の脇に避けた。じいさんが麦わら帽子に手をやり、目礼をしてくる。
「いい天気ですね」
ちょっと挨拶してみた。ロバが止まる。
「おう、雨が降るか思ったがの。どこへ行くんじゃ?」
「土庄、いや、ギルドまで」
「ほうか。乗ってくか?」
これはナイスな展開だ。おれは馬車の後ろへ乗せてもらった。
荷物はワラだった。ワラの上に寝っ転がり馬車の揺れに身を任せる。アニメにでも出てきそうなシーンだな。すげー気持ちいい。
考えを少し改めた。車もいいが、馬車もちょっといい。
雲を眺めながら、気分が少しワクワクしてきた。あの、さびれた港町、こっちじゃどうなってるかな。
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