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(七)
(七)
それからの彼女らに、死の影など微塵も近寄りはしなかった。
呪いの成就率、九割八分―――ふたりには残りの二分が充当されたのか……。
しかしおそらくの真相は―――。
初日、琴華が車中で反芻した中での、
『―――ただ、大事なことは……』
そのあとに続くはずだった、
“行為中他人に見られたら、効力が失われる”
との要件が、ふたりの頭からすっかり抜け落ちていたからではないか。琴華は黒牛の心配に以降の思考を持っていかれ、宇都は釘打ちの仕方だけに意識を奪われ。
また、恋愛感情を有するそぶりなど見せなかった相手の告白が、満願のちょうど翌日になったことは、偶然ではなかったかも……。との思いを持ったのも、ふたり同じく、それぞれの彼とブライダルフェアに参加している最中だった。
過去、恋愛成就の神としてにぎわっていたL神社である。参拝客が途絶えた中で毎晩賽銭を放れば、祟り神もさすがに感激するだろう。そこで、願ったわけでもないご利益を授けてくれたのではないか―――。
そして満願翌日、全国紙の三面に載った、
『一流企業の若手重役候補、何者かに刃物で複数か所刺され死亡』
という見出しに意識がいかなかったことも、やはり同じだった。
彼女たちの呪いは効力を逸していると思われるのに……という疑問はたやすく解消できる。
そんな男、呪う女はほかにも山ほどいるだろう。
〈了〉
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