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その5
南部
…来たか!
「南部!門前仲通りのゲーム喫茶、想定通りになったぞ!すぐZに行ってくれ」
「そうか!連中、とうとう尻尾を出したな。で、”先方さん”は何名様なんだ?」
「最初は3人だったそうだが、オレが連絡受けた時点では5人ってことだ。フン、全部、在○野郎らしいや。ヤツらべったりツルんでるから、まだうじゃうじゃ増えるかもしれん。こっちはすでに3人が店に向かってるはずだが、砂さんにはこれから声かけて、集まるだけ集めて駆けつけるからよう…」
「わかった。じゃあ、先に行ってる」
オレは、門前仲通りのゲーム喫茶”Z”へとバイクを飛ばした
アイツら…‼
黒原さんの顔に泥を塗りやがって…
根性を叩き直してやる!
真冬の寒風に身を晒し、オレの体は冷え切っていたが、頭はカッカと熱くたぎっていたよ
...
あれは2週間前だった…
「…聖一、在○連中、Zのタカリ側に付いたらしいわ。完全、ケンカ売ってるぜ。こっちも細かい主義主張は後回しでまとまらねーとな。何しろ在○はホントつるみ上手だから、このままじゃ、ヤツらに呑み込まれるって」
「砂さん、だからって安易に数を集めることに目が行っちゃうと、いつまでたっても覇権争いのタネが絶えませんよ。ここは在○だの純血だのとか東京だダ埼玉だってこだわりを捨てないと。まずは…」
「そんな呑気なこと言ってるから、在○がかたまってこっちにプレッシャーかけてくるんだ。黒原さんという存在があってこそ、オレらガキが気の合う少数グループに分かれてても共存出来たんだ。でもよう、あの人はもういないんだよ、聖一。そこんとこをよく踏まえないと。現実としてな」
砂垣さんの言ってる意味はよくわかるさ
あの黒原さんがいなくなったら、今までどおりは無理さ
しかし、そんな想定、みんな承知してただろう
今の動きは、それを織込み済んだ上での延長だろうが
オレを含めて…
...
「…砂さん、黒原さんがいなくなったからこそ、それを”すべて”の理由に当ててしまったら、みんな自分に都合のいい解釈でその主張をぶつけられますよ。そんなこと許したら、カオスですって。黒原さんに魅了されて、オレ達はこの都県境で熱い思いを共有できたんです。その求心力たる存在を失った…。これはオレ達全員にとって、フェアな事実なんです。それをまずは受け止めて、オレ達が求めていたものをもう一度、見つめ直しましょう。そうすれば、無用な荒らしや憎しみ合いはわずかでも避けられますよ!」
「南部、それが出来りゃあ、苦労しねえよ。できねーから、その先を作り出さなきゃなんねーんだって。黒原さんという偉大な男をなくしてさ、残されたオレ達は所詮、皆凡人だ。きれいごとは通用しねえ。現実なんだ、それは。誤解だのって、黒原さんの口上なら奴らも耳を傾けるが、俺達となれば、そうはいかんだろーが。だから、それでどうするかなんだよ、要はよう!」
「オレ達墨東会は確かに凡人の群れですよ。あんたが言うとおり。黒原さんと同じ理想述べても、連中の心には届かない。オレ達では…。でもこの都県境には、黒原さんと同じ伝達力を有する人間がもう一人います」
「南部、テメ~~、まさか、それって…‼」
「紅丸有紀ですよ、言うまでもないが…」
紅丸さんの名を聞くと砂垣さんは顔面を紅潮させ、オレに喰いかからんばかりだった
...
「おい!女に媚び売ってまでコトを収めるってのか、お前はー‼」
「別に媚びる訳じゃないですって。それに女だからって云々はナンセンスです。黒原さんだって、紅丸有紀って人を特別な存在として捉えていたんですから…」
「フン、俺は女なんかとお手手繋いではゴメンだぜ。第一あの女、男を排除して女だけの勢力拡大を目論んでるだろうが!そんなもんに与みできるかってんだ。アホくさ…」
やはりこういう切りだし方だとこの人、取りつく島がないな
もっとも、この考えは他のみんなもほぼ一緒で、砂垣さんに限ったことではない
だが…、このままじゃ、こっちが在○の勢力と敵対して、まとまったところを愚連隊系の半グレたちに吸収される
それこそパックリだろうよ
そうなれば…、やくざと変わんない無法集団と化すのは必定だ
ここは例え少数でも、志を共にした精鋭たちと手を携えなきゃ…
その核になるのはやはり墨東会しかない!
まずもっては、墨東を紅組みたいなしっかりした理念を掲げる一騎当千の集団にすることが不可欠だ
たとえ少数でも
その為には…
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