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その9 剣崎 「よし、すぐヒールズに連行しろ!こっちも作業にかかる」 ふふ…、どうやらあっちの店の方は段取り通りらしいな 「親分、能瀬からです。予定通り10人のうち、”対象外の2人”を外してここへ連れてきます。こっちもかかりますか?」 「ああ、”下ごしらえ”はもうやっとけ」 倉橋は無言で頷いた さあ、撲殺人のスイッチが入ったぞ(笑) ... 「…勝田!始めるぞ!」 倉橋はカウンター内から動かずに、その場で2階へ大声を発した ドンドンドン… 間もなく勝田が上に監禁していた男二人の髪の毛を引っ張って降りてきた ドタン! 「オラー、そこでおとなしくしてろ!」 勝田は乱暴に店の奥に二人を放ると、床に倒れ込んだそいつらにそれぞれ2発ずつ蹴りを入れてるわ 「モゴ、モゴ、モゴ…」 ハハハ… こいつら体は縛られてる上、ガムテープで口をふさがれてるんで、世話なくていいや すでに状況は理解してて、もう目なんか怯え切って命乞いモードだな まあ、殺しはしねーから、安心しな… ... 「勝田、下ごしらえは一人だけだ。顔面中心で行け」 「はい!」 まだカウンター内だった倉橋は煙草を加えながら、事務的に勝田へ作業開始の指示だ およそ10秒間… 勝田は左側の男を選んだようだ すぐにそいつに馬乗りになると、無言で顔面に右こぶしを何度もつき下ろし、仕事にかかっていた 「うごっ、うご、うごっ‥」 男の発するガムテープの下からの絶叫は、4,5M離れた俺が座ってる入り口付近のシートまで重々しく届いてくるわ そんで、隣のもう一人は引きつった顔で仲間にクギ付けだな ... 「…親分、いいんですね、本当にやって?諸星さんの方は大丈夫なんですよね?」 「ああ、構わん。こってりやってくれていい」 「わかりました。なら、そんで行きます」 フフ…、倉橋が念を押すのも無理はない 一昨日の最終打合せでも、ちょっと戸惑っていたしな(苦笑) ... 「なるほど…、じゃあ、その愚連隊は指カットですね」 「ああ、定番でいいが、電動でやってくれ。音が出れば演出効果になる」 「ええ。でも…、いいんですか、そのターゲットは星流会の雇いなんですよね。諸星さんと厄介なことになりませんか?」 「いや、今回あの人は概ね流れを読んでると思う。たから、それなりの”人選”でZに送り込んだらしいんだ。フン…、何でも処分対象で囲ってた男2名ってことだ。さしずめ捨て駒だろうさ。言わば、多少こっちが過激に出ることは覚悟しての上じゃねえか。諸星さんもウチの会長とは長い”付き合い”だ。暗黙のキャッチボールは心得てるさ。とは言っても、実際のコトを目の当たりにすれば、想定超えで卒倒するかもしれんが(笑)」 撲殺男は腕組みして、真剣な顔付きでうなずいてたわ(苦笑) ... 「しかしですよ…、じゃあ、今回は何か得るものが他にあるんですかね、あっち側には…。それとも、親筋からの命令ってこととか…」 「おそらくZの件は諸星さんの組み立てだろう。無論、東龍会には承認を取りつけてあるだろうが。…これは相馬会長の見立てだが、諸星さんの狙いはガキの見極めだとな」 「えっ…、それはどういうことですか?」 「黒原盛弘が生存中はよう、諸星さんもあのガキどもには手を突っ込めなかっただろう?なら、彼が死んだ今、諸星さんにとってはガキの市場確立への”人材”発掘のチャンス到来って訳だ」 「ほー、そういうことですか…」 「フフ…、たぶんオレ達の計画が遂行された後、ガキどもは再編成に向かうだろう。在○だの純血だのってこだわりを超えて、それなりのかたまりがいくつかな。その中から”使える”ガキを諸星さんが見極めて、ピックアップする気だと…。会長はそういう読みだったよ」 「そうか…、今抱えてるのは、ほとんどやくざと変わらんチンピラに毛の生えたハンパもんですからね。今回のターゲットのような連中です。でも、諸星さんの描くガキをつかった2次組織化には、より”ガキ”ってことが条件になるんでしたね?」 「ああ、そうなんだろうな。考えてみれば、自分たちの隠れ蓑の役目を果たしてくれるとなると、やくざ色は限りなく薄い方が何かと好都合だよな」
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