惨劇はかく起こった~ヒールズにて

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惨劇はかく起こった~ヒールズにて

その1 南部 「オラー、着いたぞ!さっさと中へ入るんだ!」 ヒールズ… オレの目に映ったその4文字 それは、寂れたスナック風の店の看板に刻まれていた どう考えてもマトモな店じゃない… 咄嗟に抱いたオレの思いは、おそらくここに”連行”された全員、同じだったろう オレ達はスーツ姿の屈強な男達に、その薄暗い店の中へと押し込められるように入っていった ... そして店内をさっと見回すと、すぐに店の奥で体を縛られた二人の男が視界に入った その瞬間、”すべて”を理解したよ しまった! ワナに嵌まったぞ… オレはこれから始まる光景が、条件反射的に頭に浮かんだ 数秒でその光景の意味するところが理解に達すると同時に、背筋には凍るような寒さが襲っていた だが…、その寒さは序章だった オレの目線は男達ではなく、すぐ脇のテーブルの下を捉えていたんだ そこに佇んでいたのはチェーンソーだった… ... 「やんちゃな坊やたち、ようこそだ。まあ、立ったままじゃなんだから座りたまえ」 第一声は、縛られて床に転がってる二人を見下ろす位置のボックス席にかけていた、長身らしきサングラスの男だった 人目でやくざの幹部だってわかったよ いよいよ、この先の展開はリアルなものになる… どんなアホでも、この状況、そう解釈できるって 俺の隣の砂垣さん、もう脂汗ダラダラ垂らしてるよ ”カシャッ!” フン…、入り口付近に立ってたスーツ姿がドアに仕錠したわ いずれにしても、ここヒールズは修羅場と化す… まもなくだ ... 「…聖一、まずい雰囲気だぞ。もし連中から経緯を聞かれたらよう、お前からうまく説明してくれな」 砂垣さんはオレの耳元でそう囁いたわ 連中への視線を背けず、直立不動で… 「なら、事実をそのまま言うしかないですよ。いいんですね?」 「ああ…、とにかく連中を刺激しないように頼む…」 オレはここで、ココに連れて来られた8人を確認してみた 高本はここにいるが、”あっち側”の人間二人はうまく逃げたようだ まあ、この状況に至れば、”あっち”が”どこ”なのかはよくわからないが… ... 「…みんな顔色が悪いな。まあ、不安になるのは当然か…。では初めに、君たちが置かれたこの状況を手短かに説明しておこう。…まず俺は相和会の剣崎というものだ。当然、ここへ君たちを連れてきた5人と、店にいる2人も相和会だ。Zは相和会が事実上管理してる店だと理解してくれ。そのZの店主に、相和会が禁じ手としているみかじめ料を突きつけたのが、そこに転がってる2匹だ。すでにコイツらからは、星流会に遣わされた愚連隊のハンパもんだと供述を受けた」 これで理解できたぞ、はっきりと! 相和会による、星流会の愚連隊を使った荒らしに対する報復だろ、これは… とういうことは… ... 「…Zの他にも同様の行為に及んだ店は、こいつらから述べてもらった。そこで、この後の俺の役目は極めてシンプルだ。再発防止の措置ってことさ。コイツらの雇い主に、”それ”をわかってもらえる手段を講じる」 もうオレの”想像”は120%間違いない 気の毒だが、そこの縛られた愚連隊二人のこの後は、もう決定を動かせない… 残るはオレ達8人のこの後だ 頭の中は混乱しているが、ここは何とか冷静に考えないと…!
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