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その2 「御手洗の言うことは一理ありですね。…ノボルさん、早合点はそりゃあまずいが、高みの見物が出来ると決め込むのは安直だと思う。ここは余計なことに巻き込まれないことが肝要です!極めて慎重に判断して進みましょう…」 「だがなあ…。これまで、いわば中立ってスタンスで”あそこ”に留まれたんだ。おかげで、将来を見据えた接点も各方面で敷けたし、あそこの界隈の見聞も深めた。仮にオレたちの方からだ、黒原亡き後の再編にしゃしゃり出ようとしたって、そんな関与は簡単にできねえだろうと思うが…。だか、相和会ってなるとまあ、そこは何でもアリになるんだよな?」 「そうです!どうですかね、ここは東龍会の意見も聞いて…。武次郎には折本さんが黒原逝去の一報もくれて、今後のことは近いうちにってニュアンスでしたから…」 「わかった。オレの方からも折本さんに連絡してみよう…」 「頼んます、ノボルさん」 椎名はいたって冷静沈着だった。 ... ”オレとしたことが、確かにドン感だったかな…。ふふ…、何しろ、あのポジションは居心地良かったしな。人間が安住の地に腰を落ち着けるということは、一種の麻薬作用だな…(苦笑)” 年明けより御手洗らと共に、埼玉県境の東京北部に”進駐”していたノボルは、あくまで縁故の店舗管理という名目で、愚連隊や暴走族などのワルグループとも、利害関係なしの立場で通せた。 そこからくる安心感・気軽モードといったものは、考えてみればノボルがこれまで味わったことがなかった”気分”だった。 それだけに、不測の事態勃発にも拘らず、どこかいつもの慎重さが伴わなかったのかも知れない。 そして、ノボルは東龍会幹部の折本と電話で今後の方針を相談することとなったのだが…。
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