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その1 剣崎 矢島さんがヒールズに到着した 相和会総本部から直接だから、おそらく会長から何らかの指令を持ってだろう まあ、おおよそは見当がつくが… ... 「オヤジは、ここらで一発食らわしてやれってことだ」 予想通りだった 「ターゲットはどこにしますか?」 「門前仲町のゲーム喫茶だ。そこの経営者からは、最近出入りしてる愚連隊系のガキが星流会の唾付きだって裏がとれたからな。ガキを通じて”要求”も臭わせてきてるらしい。店とはこっちの組み立てに任せる旨の了解をとった。この仕込み、現場は倉橋にとオヤジが指名してな。今回は念入りにってことだわ」 「わかりました。どんな組み立てにしますか?」 「うん、オヤジのリクエストはこっちもガキを使ってよう、あの在○野郎に泡吹かしてやれってさ。フフ…、相変わらずあの人は諸星のことなぞ、もて遊んでるぜ」 矢島さんはそう言ってグラスのビールを一気飲みして、口に付いた泡を指で拭うとニヤリと笑ってたよ(苦笑) ... 星流会は関東広域組織の直系・東龍会の傘下で、関東本家からは2次団体に過ぎない 会長の諸星は在○系で、相和会とはこの都県境で縄張りが近接している事情を抱えていた関係で、昔から何かともめ事を繰り返してきた 一方、関東本家としては、ライバルの関西にこれ以上影響力を持たせない為には、東西いずれの全国組織にも組み込まれず独立系の雄として業界で特異なポジションを保ってきた相和会を傘下に置くことは、まさに長年の悲願と言えた 関東の直系組長でも有力組織の一角に座す東龍会の坂内会長は、相和会とは小競り合いの絶えなかった星流会を抱えていることで、関東本家から対相和会の窓口的な役割を担ってきたんだ 過去様々な局面で相和会吸収の策を講じてきた際、そのほとんどが星流会を背後で東龍会がプッシュする絵柄だったからな ある意味、この業界では有名な定番の構図だったよ(笑) ... フフ…、だがその都度、相馬会長率いる相和会は星流会をおっぺ返し、諸星はほうほうの体を晒して撤退していくのが常だったんだ この数か月前からの今回も”それ”だと、こっちは判断にいたった そこで、じっくりタイミングを計り、会長はここで行動に入ることを決断した訳だ 今矢島さんが言ったように、あの人のことだ… ここで動くことで、なにしろ一番面白い展開に持ってけるだろうと踏んだんだろう とにかく諸星はこれまで、ガキを抱えてシノギを生み出す仕組みを試行していたからな そうさ、都県境界隈ではしゃいでるガキどもの今現在おかれた”諸事情”を考え合わせれば、このタイミングはまさにベストの選択と言えるしな
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