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そんなロボットのいる生活がしばらくつづいたある日、ちょっとした事件が起こった。
「ねえ、パパ。ロボがおかしいんだ」
「どうしたんだい、ぼうや」
子どもに手を引かれる。ロボットの前まで連れていかれた。
「スイッチを押しても動かないんだ。エサをあげてもなんの反応もしないし。ひょっとして死んじゃったのかな」
子どもが沈んだ声で言う。
「ロボットは死なないよ。きっと壊れたんだろう」
父親がロボットを持ち上げる。長いあいだ使っていたので、小さな傷や汚れが目につく。くまなく全身を眺めてみるが、しろうとにはどこが故障しているのか見当もつかない。
「ねえ、どうにかならないの。また遊びたいよ」
「そうだな。修理できるのかな。いや、修理は高いかもしれないな。時間もかかるかもしれない」
ぶつぶつと考える。
「そうだ。ぼうや。新しいロボットを買おうか」
「え、本当に」
「ああ、新品を買えば、いまのロボットよりぴかぴかになるぞ」
「やった。はやく買いに行こうよ、パパ」
子どもが袖をひっぱる。思ったよりずっと強い力だ。
「わかった。わかったから」
「新しいロボットにはなんて名前をつけようかな」
新しいロボットがやってくるのを、子どもははやくも楽しみにしている。動かなくなったロボットはその役目を完全に終えて、ごみとしてただ転がっていた。
〈了〉
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