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彼女は非常に安心したらしく、しばらくの間、憑きものが落ちたようにぐっすり眠った。人の仕業だとわかってから、盛り塩も、やめた。
すっきりした彼女は、予定通り母親と兄の十三回忌に行った。
『電車が遅れているみたい。帰宅が深夜になりそう。先に寝てて』
彼女からメールが来た。
俺はお言葉に甘えて、先に風呂に入った。
空気がおかしい、と思いながら風呂から出ると、ラグやフローリングにびっしりと灰のような足跡がついていた。
温まった体から、冷や汗が噴き出す心地がした。
逃げなくては。そう思ったとき、背中を強く押され、足跡の上に倒れ込んだ。
起き上がろうとしたが、体は動かない。誰かが馬乗りになっているみたいに。それなのに、自分の意志とは裏腹に、首は上げられる。紐のようなもので絞められ、上げさせられているかのように。
黒い霧のようなものが、視界にちらつく。視界も不明瞭になってきた。
薄れゆく意識の中で、雑音交じりの声が聞こえた。
――俺は、あの子のボディガードだ。妹に手を出すやつは、殺してやる。
【「俺はボディガード」完】
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