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俺はボディガード
異変に気づいたのは、同棲初日だった。
フローリングとラグにびっしり。それらは足跡であると直感した。それも、普通ならあり得ない足跡だと。
「ねえ、これ……あれだよね?」
彼女に訊かれた。彼女も、同じことを考えていたようだ。
「内見のとき、何かいたっけ?」
「何もいなかったはずだが」
俺はラグに膝をつき、指先で足跡に触れた。粉のようなものが指に付く。
埃ではない。小麦粉とも違う。
「灰……?」
俺が呟き指先を彼女に見せると、彼女は表情を曇らせた。
「悪い。意地悪したわけでないんだ」
「わかってる。私こそ、ごめん。……本当に、ごめんなさい」
「きみのせいじゃないさ。これからのことを考えよう」
彼女と俺は、同じ病院に勤務する看護師。価値観が合い、変なところで、ツーカーの仲だ。
だからこそ、確信を強めてしまう。
きっかけとなったのは、あの日だと。
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