私の証明

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 病室のベッドに儚い笑顔を残す少女が、いる。  私の妹だ。  あぁこんな状況になっても妹は、ほほ笑みを絶やさないのか。「無理しないでね」と両親や姉である私を気遣う妹は本当に優しい性格だ、と心から思う。私はよく妹と比べられて、性格の悪さを指摘された。「お前は冷たい」「いつも馬鹿にしてる」「嫌な奴だ」と馬鹿にされたり罵られたりした。私へと向ける言葉がもっとも激しかったのは、母親だった。「本当にお願いだから……。お前は、もっと人間らしくなってくれ」という言葉を投げ付けられたことさえあった。  喜怒哀楽の感情が表に出ないらしい私は、周囲に気付かれることはなかったが、いつも悲しんでいた。  同じ人間に傷付けられて疎まれて、本当に私は彼らと同じ人間なのだろうか。〈冷血女子〉というあだ名をクラスメートから付けられていたことも知っている。  そんな私に唯一優しかったのが妹だった。私の悲しみに気付いてくれたのも、妹だけだった。 「泣かないで。お姉ちゃん」  と私の頬に添えたその手は温かく、それこそ血の通った人間の体温だった。私に無いものを持っている妹が羨ましかった。「ううん。泣いてないよ。私は泣けないの。昔から」 「違うよ。悲しんでる。泣いてる。大丈夫……、大丈夫だから」  それでも私が人間である、と信じさせてくれる妹の存在は救いだった。  だから輸血の話が出た時、私は真っ先に手を挙げた。 「駄目よ。だってあなたは」と反対したのは母だった。 「お願いします」  懇願するように、私は母を見たがその必死な想いもきっと受け取ってはくれないだろう。  だが父が言葉を挟むように、「じゃあ試してみればいい」と投げやりな口調で言った。  私の願いも虚しく、私から流れ出す血は一滴もなく、私は強いショックを受けた。両親はこうなることが分かっていたのかもしれない。父が「ほらな」とちいさくため息を吐き、母が半狂乱になって叫んだ。 「だから言ったのよ。あなたは昔からそう。血も涙も、ないのよ! なんであなたなんかを。もうあの子がいれば、あなたなんて必要じゃないのよ」  私は泣いていた。それは母の言葉にではなく、妹の力になれなかった悔しさで。だけど涙ひとつ落とさない顔を、人は〈泣いている〉とは言わない。
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