9 ライオン

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 他局の動物番組を担当することがあればここに来るかもしれない。と、考えたぼくは老人に「お近づき」になっておくことにした。 「本日はありがとうございました。こちら、名刺です」 老人はぼくの名刺を興味深そうに見回す。 「ほう、フリーランスのADさんですか」 「はい、色々な番組を渡り歩いておりますので…… 別の番組でまたお訪ねさせてもらうかもしれませんので、お見知り置きの方を」 老人はスマートフォンを出した。そして、ぼくの名刺に載っていたQRコードを撮影する。 「君の番号を登録しておいた。君が担当する番組でネメアを扱いたい場合は連絡してくれ給え」 「あ、ありがとうございます……」 すぐにぼくの携帯電話が震え上がる。 「儂の携帯じゃ、登録しておきなさい」 「本当に、ありがとうございます」 「普段なら相手にもしないのだがな。身につけた知識は君を裏切らない」 ネメアの件で気に入られたようだ…… クイズ番組での経験がこんなところで役に立つとは。人生、何があるか分からないものである。
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