36人が本棚に入れています
本棚に追加
/135ページ
他局の動物番組を担当することがあればここに来るかもしれない。と、考えたぼくは老人に「お近づき」になっておくことにした。
「本日はありがとうございました。こちら、名刺です」
老人はぼくの名刺を興味深そうに見回す。
「ほう、フリーランスのADさんですか」
「はい、色々な番組を渡り歩いておりますので…… 別の番組でまたお訪ねさせてもらうかもしれませんので、お見知り置きの方を」
老人はスマートフォンを出した。そして、ぼくの名刺に載っていたQRコードを撮影する。
「君の番号を登録しておいた。君が担当する番組でネメアを扱いたい場合は連絡してくれ給え」
「あ、ありがとうございます……」
すぐにぼくの携帯電話が震え上がる。
「儂の携帯じゃ、登録しておきなさい」
「本当に、ありがとうございます」
「普段なら相手にもしないのだがな。身につけた知識は君を裏切らない」
ネメアの件で気に入られたようだ…… クイズ番組での経験がこんなところで役に立つとは。人生、何があるか分からないものである。
最初のコメントを投稿しよう!