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1 紅白ゴスロリ双子ババア
ワイドショーの取材でいわゆるゴミ屋敷を訪ねた時の話。
ワイドショーを見ていると、年に数回ぐらいは「ゴミ屋敷」を取り上げられるのを見たことがあるだろう。ぼくのこれまでの経験と偏見の目も多少は入っているが、大半は昭和テイストのような木造平屋建てにゴミが積み上げられていると言った感じだ。令和の今になっても時折ゴミ屋敷の取材をすると先述の家が多い。今回、ぼくが訪ねるゴミ屋敷もその例に漏れない。
ぼくは新人の局アナのAさん(個人的主観だが、有名大学のミスコンで優勝経験があり見た目だけの女だ。カメラの前に立っても緊張しない度胸持ち。滑舌は新人故にまだまだ、高校だか放送部のアナウンスの域を抜けない)、カメラマンの田中さん(この道三十年のベテランスタッフ、ぼくも正直頭が上がらない)との三人でそのゴミ屋敷に行くことになった。
今回のぼくの役割はワゴンの運転手、兼、AD業務の細やかな雑用の担当である。
本来ならディレクターも同行すべきなのだが、同時期にテーマパークが新しく出来たとのことで、そちらの方に行ってしまった。ゴミ屋敷の取材とテーマパークの取材、どっちに行きたいかは目に見えている。ぼくだって本音を言うとテーマパークの取材の方に行きたかった。
ディレクターに呼ばれてテーマパークの取材に連れて行かれたテレビ局所属のADが羨ましい。
ここで愚痴をこぼしても仕方ない。ぼくはゴミ屋敷の近所にあるコインパーキングにワゴンを停め、先んじてゴミ屋敷の近くに降ろしていたAさんと田中さんに合流することにした。
その道中、ぼくは「菓子折り」を買っていないことに気が付き、慌てて近くのコンビニに駆け込み購入した。こういった取材業務では「菓子折り」は必須品だ。
ゴミ屋敷の主人とは言え一応は一般人(業界人故の見下しの意味は無いので悪しからず)、挨拶のために何かを持っていくのは基本だ。ぼくが報道のADを担当した時に一番初めに教えられたのは「どこか取材に行く時は菓子折りを持っていけ」だった。
それを教えてくれた先輩ADはもうとっくにADを辞めて普通のサラリーマンになっている。
ぼくは菓子折りを片手にAさんと田中さんに合流した。待ち合わせ場所であるゴミ屋敷の前ではなく、そこよりかなり離れた交差点だった。ゴミ屋敷の前で集合予定だったのにどうしてこんなところにいるのだろうか。
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