1 紅白ゴスロリ双子ババア

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「さあ、どうぞ」 応接間も似たようなゴミ屋敷に違いない。そう思っていたぼくの考えは裏切られた。 なんと、西洋の応接間だったのである。中央には西洋アンティークの骨董品を思わせるテーブルと椅子が置かれ、床は絨毯。壁一面には棚が置かれており、そこには西洋アンティークのビスクドールが所狭しと並べられていた。数にして…… いや、数えるのも諦めるぐらいに多い。 部屋の匂いも芳しい、部屋の隅に置かれた薔薇の花の香りのおかげだろう。 外は生ゴミの匂い、この部屋だけは芳しい程の薔薇の香り。 ぼくたちは異世界に迷い込んでしまったのだろうかと錯覚に陥りそうである。 アリス嬢のように、木の洞の穴に滑り込んだわけでも暖炉の上の鏡に飛び込んだわけでもない。 このゴミ屋敷は昭和の趣の残る平屋の木造建築。そうなると、この一室だけを西洋風に改築したのだろうか。ぼくは格好といい家といい「薄気味悪い」と、考えてしまった。Aさんも先程までの生ゴミの臭いも相まって引きつった笑顔をしていることから考えは同じだろう。田中さんは生粋のプロなのかそれを表情に出さずに黙々とカメラを回し続けていた。 「ささ、どうぞ」 我々はテーブルに就くことを促された。椅子は装飾品の施された二人がけのソファー。ぼくとAさんとで座ることにした。田中さんはカメラを回す仕事があるので立ちっぱなしになる。
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