はじめに

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はじめに

ぼくは、AD(アシスタント・ディレクター)だ。ADと言ってもただのADじゃない、フリーランスのADである。 ADと言う職業はとにかく過酷で一年から二年…… いや、数ヶ月…… もっと短いかもしれない、ぼくの知る奴だと三日とかで逃げ出して辞めた奴もいるぐらいである。 ADと言うのは入れ代わり立ち代わりの激しいもので、同僚が出来て顔を覚えても知らない内に辞めてるなんて話も日常茶飯事である。 世間で言う「仕事は三年続けろ」をADで出来た奴なんかそうそういない。ぼくのメンタルは鋼構造なのか、ドMを極めたのか、このキツイ環境に耐えることが出来て、ADを十年間続けている。 何度かディレクターへの昇格を打診されたのだが、ADの下働きや小間使いと言うか…… このようなコツコツとした仕事の方が好き故に断っている。制作会社社長からの昇格の打診を断るのも面倒臭くなったので、ぼくは制作会社から独立して、番組毎の契約で動くフリーランスのADと言う道を選ぶことにした。ADを始めて三年目の話である。 フリーランスになってから七年、色々なテレビ番組を担当してきた。ロクに帰りもしない六畳一間のアパートの本棚にはこれまで担当してきた番組の台本がギッシリと詰められている。テレビ番組の台本と言うものは放送時間の割には極めて薄い、それこそノート一冊かそれの半分ぐらいの厚さである。これを本棚にギッシリと埋められる時点で多くの番組を担当してきたと言うことを分かって貰えればありがたい。 報道ニュース、スポーツニュース、ワイドショー、ドラマ、バラエティ、クイズ、教育、環境…… テレビ番組はほぼ何でもやってきた。担当していないのはアニメぐらいだ。 こうして数多くの番組を渡り歩いていると「怖い話」も一つや二つじゃ済まない。 今回はこの中から特に怖い選りすぐりの話をしようと思う。
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