3人が本棚に入れています
本棚に追加
唐突な真鍋先輩の言葉に私が顔を上げるとそこには。
……あの日の不良が、そこにたっていた。
「ま、なべ……先輩!?」
「ずっとメガネで気がつかなかったんだろう、君は。ボクのこと」
「だって、真鍋先輩、私が来た頃にはもう今の真鍋先輩で……」
「そうだよ。君に出会って、真面目に生きるかっこよさに憧れたんだよ」
「え……私?」
(嘘、そんなこと……私はあの日私にとってだけ当たり前の行動をして、恥をかいただけ)
「あの日。ボクは自分に嫌気がさしてグレてしまおうとしたんだ。髪まで金髪にしてさ。タバコを拾って、ソレを吸おうとした。でも、震える君の注意を見て正しいことを正しくできる人になりたいなって思った。ソレまでボクは、真面目系クズで、ちっとも今のボクみたいじゃなかったんだ……」
混乱した頭で思い出す。あのときの不良は、どこか不安げだった。周りを見てキョロキョロして、どこか迷いを感じた。その理由が、そんなことだったんだって。
でも、その気持ちはわからなくもなくて。
自分がいやになる気持ちは、私だってある。素直に真鍋先輩が好きだと言えない、あまのじゃくな自分。真鍋先輩はすごいんだと皆にはっきり言えばいいのに、遠回しに真鍋先輩の株を上げようとして、なんだかんだで真鍋先輩を馬鹿にしてるような行動を取ってしまった自分。だけど。怖かったから。ありのまま、好きですなんて、言うのが怖かったから。せめて。そう、自己満足で願ってしまった。だってもうすぐ私は……!
最初のコメントを投稿しよう!