冷たいママ

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◇◇◇  そんなある日のこと――。  お城で舞踏会が開かれる、という話を聞いた。お姉さまたちがその話題でもりあがっているのが、聞こえてきたのだ。  お城のなかで踊るということだけでもすてきなのに、その上、もしかしたら王子さまに手を引かれて踊るチャンスだってあるかもしれない、という。  ああ、なんてすばらしい。一生に一度でいいから、そんな夢のようなひとときをすごしてみたい。  あたしは思い切ってママにお願いした。 「ねえ、ママ、あたしもお城の舞踏会に行っていいでしょ?」  そしたら、ママに速攻で返された。 「なに馬鹿言ってるの。そんなの、ダメに決まってるでしょ」 「だって、お姉さまたちは、ふたりとも行くのでしょう? たまにはあたしもお休みをいただいて、お城に行きたいわ」 「ふんっ、つべこべ言わずに、あんたは黙っておそうじしてりゃいいの」 「ひどい。ママはあたしに冷たい。お姉さまたちには、あんなに甘いのに」 「当たり前でしょ。あの子らは、わたしがおなかを痛めて産んだ、実の子なんだから。あんたはそうじゃないでしょ?」 「ひどい。ひどいわ、ママ。なんて冷たいの」 「うるさいね。わたしはあんたのママじゃない!」  あたしはその場に泣きくずれた。  ママは舌打ちして、携帯電話を取りだした。 「もしもし、オレックス・レンタルさん? おたくからリースしているAIおそうじロボット・シンデレラ3号の調子がおかしいのよ。すぐに来てくれる? いい? すぐよ?」                               (了)
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