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「だめ……なんでしょうか?」
頼りなげにすがりついてこようとする物言いに、斑尾は少しいらだった。
「この足あとは、ほとんどが奥さんの血で、犯人の汗の成分はごくわずかしか含まれていない。それでも呪いというのは不思議なもので、有効だったりするんですよ」
「じゃあ……?」
おちくぼんだ河田の目が輝いた。
「ええ、たぶん大丈夫でしょう」
「ありがとうございます」
「ただし」
斑尾はピシッと指を立てて見せた。
「足あとを使って呪う、となると、相手の足を攻撃することになります。重症を負わせる自信はありますが、相手の命まで取れるか、というと、保証はしかねます。さらに」
河田に口を挟ませず、斑尾は続ける。
「仮に相手を呪い殺したとしましょう。どこのだれともわからない人です。もしかしたら、北の果てに住んでいる人かもしれない。その人が死んだことなど、こちらのニュースにならないかもしれない。すると、復讐を果たしたとしても、あなたはそれを知りようがないんですよ」
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