聖なる朝に、

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 揺らいだ黒い気持ちは、俺の心の奥底にひっそりと息づく亀裂に巣食う。そうして、じわじわと侵食する。だから俺は、その不安を払拭することができない。  小梅は強くて、綺麗で、まっすぐで。今だって、きっと俺が縋るから、逃げないでいてくれるだけなのだ。  如何して、俺なんかの傍にいてくれるのだろう。俺は未だに、その答えを見つけられてはいないんだ。 「……桃?」  黙り込んだ俺を覗き込む。そっと顎を持ち上げて、ふっくらとした唇に親指を滑らせる。甘美なぬくもりが俺の指に恋情を灯す。  可愛くて、可愛くて、愛おしすぎて、不安になる。  何処にも、いかないで。  臆病者の俺から逃れるように、俺の腕の中に在る柔らかな熱をそっと抱きしめる。驚いたように小梅が小さく身じろぎをする。 「いつもみたいに逃げたいなら、ちゃんと逃げればいいのに」 「…………」
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