聖なる朝に、

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 冷たい風が頬を撫でる。瞼の上でチラつく光に、そっと目を開く。  朧げな視界で如何にか輪郭を保っているのは、散乱した紙と自分の腕、そうして燃え尽きたロウソク。  回りきらない頭で、昨日も資料をまとめているうちに、突っ伏して寝落ちてしまったんだなと思った。  案の定、ずっと頭を支えていた両腕は痺れて感覚がない。身体全体が鉛みたいに重くて、頭だけを動かして風の出処を探る。凍てつくような風の気配を追うと、それはすぐに見つかった。部屋の扉がほんの少しだけ空いていて、そこから吸い込まれるように外気が入り込んでいた。 「さむ……」  ぽつりと呟いて身体を起こそうとすれば、強張った肩がボキッと大きな音を立てる。いや待って、俺の身体はまだ若いはず、なんてことを思いながら恐る恐る肩を回した。  動かすたびに身体に走る痛みに眉を顰めながら、ゆっくりと何度か瞬きを繰り返す。  乾燥しきった目に潤いが戻り、如何にか血流が復活したとき、肩から何かが滑り落ちた。目の端に入ったそれを拾い上げれば、薄紅色の半纏だった。
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