第1話 一匹狼と人気者

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第1話 一匹狼と人気者

 最初は、苦手だった。 「一色(いっしき)も、一緒にお昼食べようよ」  色素の薄い肌に、ヘーゼルの瞳。人形みたいなよく出来た(かお)。――同じクラスの時任(ときとう) 砂音(さおと)だ。  昼休みの始まりに、突然声を掛けられた。思いがけぬ誘いに咄嗟に反応出来ずにいると、俺が何か答えるより先に、周りの奴らが慌てたように時任を止めに入る。 「時任! いいって、一色は」 「そうそう、一人の方が好きな奴なんだから」  ほら、お前の取り巻きは嫌がってんだろ。めんどくせぇな。  断ろうと口を開き掛けた所で、時任が先を越した。 「でも、俺は。一色とも一緒に食事したいな」  呆気に取られた。喉元まで出かかっていた言葉が、止まる。純粋培養百パーセントのキラキラした瞳が、真っ直ぐに見詰めてくる。 「ご飯は、一人よりも一緒に食べた方が、絶対美味しいよ」 「ね?」と、破顔するその笑顔も、やたら眩しくて。目を眇めた。――鬱陶しい。 「俺は群れる気は無い」
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