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「物真似芸人のそっくりさんじゃないんですか?騙されたとか?」
譲二が言うと金森さんが給湯室から戻って来て言った。
「それが、これだけ報酬を払うから口外しないでほしい、とマネージャーと一緒に来て言ってたのよ、その金額を見たら本物だと思ったわ。」
金森さんの言葉に皆黙り込んだ。
「そんな凄い金額だったんですか?一体いくら・・・・。」
譲二が言いかけたのを遮るように芽亜里が言った。
「皆さんにも普段よりは高額な報酬をお払いする事になります。ただし、絶対に誰にも言わないでほしいと思います。親にも友人にも誰にも言わないで下さい。お願いします。」
俺と譲二は顔を見合わせた。
「そうよ、私も誰にも言わないと誓約書を書いたわ。自分からだけどね。あんた達も書きなさいよ、特に笹木君はしっかりと約束してもらわないと・・・・。」
「特にって、どういう意味っすか?人を軽薄男みたいに言わないで下さいよ!!心外だな!!」
その場が笑いに満ちた。
「お前は特にって奴だよ、それにお前って言葉使いが昭和だよな、何故だか。」
俺が笑いながら言うと譲二は不満気な顔で言った。
「俺はばあちゃん子だからな、昭和の影響が強いんだよ。性質は父親の遺伝だけどな。」
笑い声に包まれた探偵事務所の応接間の窓が明るくなって雲間に陽光が射していた。
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