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プロローグ
やっと雪が消えたと思ったら、急に暑くなる。これがこの都市の特徴だ。
薄くまぶしい若葉が木々を覆い始めると、俺はあの人を思い出す。
「昌樹、電話よ。芽亜里さんから。」
俺は階段を駆け下りると受話器を取り上げた。芽亜里には携帯の番号を教えているのだが、最初の依頼の時は必ず家の電話にかけてくる。母親への礼儀だと思っているらしい。
「あ、昌樹さん。お久し振りです。前回の依頼の時はありがとうございました。結局依頼人は私達に頼んで良かった、昌樹さん達にもありがとう、と伝えてほしいと言っていました。
貴重なお休みを私のお手伝いに回して頂きありがとうございました。
早速なんですが、また仕事の依頼が入って来てバイトをお願いしたいのですが、宜しいですか?ゴールデンウィークが潰れてしまうかもしれませんが。
でも、また昌樹さんのお父様のいる釧路でのお仕事になりそうなのですが・・・・。」
電話の向こうの丁寧な高めの声に俺はまた安心感を覚えた。懐かしい芽亜里の声にまた会えた、と思った。
「釧路なら、大丈夫だと思います。母親も行くって言うかもしれませんが。母親と相談して折り返し・・・・。」
「いいですよ、行きます。」
俺の背後から母親が大きな声で割って入って来た。
「釧路はもともと行く予定でしたから、昌樹が遊べないだけですから、大丈夫ですよ。」
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