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(夢の中に現れる姉は、夢占いではたしか……自分の分身って意味だったかしら?)
あまり詳しくないけれど、人間関係への警告夢という意味もあったかもしれない。
そんな事を考えながら立ち上がろうとして、気付かされた。
(え……? 立て、ない)
まるで、両手首は肘掛に紐でくくりつけられ、胴は背もたれにベルトで固定されているかのように、体を動かす事がままならない。
そういえば、先ほどから私の声帯は、音の出し方を忘れてしまっているのではないだろうか?
(姉さん! ロリーナ姉さん……!)
何度呼びかけても、開いた口からはただ空気が吐き出されていくだけで、彼女の鼓膜を揺らすのは困難だった。
行動が制限され声も出せないなんて、夢占いではろくな結果が出ないでしょうね。なんて悪態を心の中で呟くと同時に、
「助けて」
ロリーナ姉さんがぽつりとこぼしたのは、そんな言葉だった。
けれど、目の前に立ちすくむ彼女の瞳はすぐ側に居るはずの私を映しておらず、どこか虚空を見つめながら姉さんは繰り返す。
「お願い、助けて」
(ねぇ、ロリーナ姉さん。誰を、助けたらいいの? 教えて)
「助けて……」
ロリーナ姉さんはゆっくりとした動作で俯いたかと思えば、ついには両手で顔を覆いわんわんと泣き始めてしまった。
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