第一話 夢占い

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第一話 夢占い

「ワンダーランドは、地獄行き」 (ああ、まただわ)  二年前。十六回目の誕生日を迎えた日から、毎晩同じ夢を見る。  赤の生地に、黒でダマスク柄の描かれた壁紙。アンティーク調の部屋は、初めは何も無い簡素な空間だった。窓も灯りもない、静かな闇に包まれているはずの室内を視認できたのは、夢特有のご都合主義だったのだろうと解釈している。  部屋の真ん中に立ちすくむだけの私は、ただ呆然と『誰か』を待っていた。ような、気がする。 (……誰を?)  夢の中で一つ目の変化が起きたのは、その場所へ来るようになってから約三ヶ月後。 (灯りが、ついてる)  昨夜までは無かったはずのシャンデリアが、さも当たり前のような顔をして天井からぶら下がり、室内を仄かに照らしていた。  風もないのにゆらゆら揺れる、私の瞳と同じ、淡黄色の光。  なぜなのか。夢の中の私はその時、「ああ、やっぱり来てくれるんだ」と淡い期待を抱いたのだ。誰を待っているのかも、ここがどこなのかも分からないというのに。  そして更に三ヶ月後、二つ目の変化が起きる。
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