黒いサンタがやってくる クネヒト・ループレヒト

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冷たくしんしんと降り積もる雪と真っ暗な闇。 それが窓ガラスの奥に広がっている。 その窓枠はキラキラとしたベルや白い綿、モミの緑色の葉で飾られ、ログハウスの内側は暖炉の明るい光でオレンジ色に輝いていた。BGMはさっきからずっとクリスマスソングだ。暖炉はその音に乗せて真っ黒い炭をチリチリと白く染めながら、煌煌と赤い炎を生み出し続けている。 その暖炉の隣には切り出されたモミの木があり、そのてっぺんには輝く星、そして下に降りるにつれて窓枠と同じような白い綿、鳩や箱、ベルなんかのオーナメント、そしてその下には大小のカラフルに包装された箱がいくつも散らばっている。 持参した箱はここに置く決まり。 そのモミの木の前では子ども達が集まってゲームをしていて、それを囲むように何人もの大人がソファやテーブルでで旧交を温め合っていた。ちょうどその中間の俺とイリナは、少し離れた窓際で窓の外の景色を眺めていた。 これはいつもの光景。クリスマス前から年明けまで親戚が集まって過ごすのが年末年始の恒例になっていた。メンバーは多少違うことはあるけど、今回は25人。毎年だいたいその程度の規模。 「パベルもイリナもこっち来いよ」 「やだね、用があるならこっちこいよ」 「チッ、しゃぁねえな」 気怠そうにのそのそやってきた俺の2歳年下の従兄弟のワジムが窓の外を眺める。 「なー明日これじゃ出かけられないよな」 ……ザッ ザザ  したの天 …… 報はアイガー全域で大雪。場所 ザッ は3メー ザザ 積雪が観測 ピー さっきから聞いていたWEBラジオをワジムに押しやる。電波もそろそろ重い雪に遮られて届かなくなるだろう。
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