ついていけない

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ついていけない

部屋で荷物を片づけているとあっという間に日が暮れた。 初日なのでカリナは今日の授業に出なくていいことになっていて助かった。最後に机の棚の一番上に、トチアでおばあがくれた小瓶を大切に直したところで、フルラとマレが戻ってくる。 「片づけは終わった?」 フルラが部屋を見渡した。 「ちょうど」 カリナは微笑んだけど、本当はヘトヘトだった。 「疲れたでしょ。夕食を食べに食堂に行きましょう」 無理したことにフルラが気づいてくれたのが嬉しかった。 三人で食堂へ向かうとすでにたくさんの人でいっぱいで、カリナは驚いた。 「こんなに生徒がいるんだ」 「夕食は、高等部も初等部も時間が同じだから混み合うのよ」 高等部ということは、アロアもいるのだろうか。 カリナがきょろきょろと見回している間に、フルラが空いた席を見つけてくれた。女の子たちが固まっている。 「やっほー。フルラ、マレ」  女の子たちがこちらに声をかけてきた。 「あ、さっきの転校生。カリナさま、だっけ」  どうやらクラスの子たちらしい。早く顔を覚えないと、と思いながら「カリナでいいよ、よろしくね」とカリナは答えた。 「さっきはオールたちが男の子が意地悪なこと言ってごめんね」  女の子たちは声をひそめた。 「オールはね、ちょっとぶっきらぼうなんだよねー」 「そこがいいんだけど」  きゃっきゃとはしゃいでいる。もう声をひそめるのは忘れてしまったらしい。 「オールは女の子に人気なの」  フルラがカリナに耳打ちをした。 (なんであんな感じの悪いやつが人気なの) カリナは教室の出来事を思い出して嫌な気分になった。確かに、顔はきれいに整っていて、ちょっとかっこよかった気もする。だからといってあんなやつが女の子に人気なんてなんだか悔しい。 「ねぇ、カリナは好きな人っているの」  女の子たちが、興味しんしんといった顔でのぞきこんできていた。 「えっ好きな人……」  好きっていまいちよく分からない、って正直に話していいんだろうか。みんなそんな答えは期待していなさそうだ。  カリナは、無意識にミトを探して辺りを見回した。ミトは、寮で友達が出来たようで、男の子たちと連れ立ってちょうど食堂に入ってきたところだった。 「あ! もしかして、あの付き人の子?」 「結構かっこいいよね、強そうだし」 「さっきもオールに怒っていたよねー。カリナを守ろうとしていたんじゃない」  きゃあきゃあと女の子たちは騒ぎ始めた。しまったと思ったが遅かった。みんなちらちらとミトの方を見ている。 「付き人なんかじゃ、お姫さまとは釣り合わないだろ」  女の子たちに水をさしたのは、オールだった。食事が終わったのか、部屋に帰る途中でテーブルの近くを通ったらしい。カリナのことを「お姫さま」とは言っているけど、それがなんだか余計にバカにしているように感じる。 「そんなことないわよ。彼、普通にかっこいいもん」 「そうよー。彼の方もカリナのこと好きなんじゃない?」  女の子たちは口々にしゃべったが、オールはふんっと鼻で笑った。 「好き同士でも、付き人とお姫さまとじゃ身分違いで無理なんだよ。残念だったな、お姫さま」  この人は、お姫さまとか身分とか、私をみんなと別物にしようとしている。  カリナはそれに腹がたってきて、声をあらげた。 「そんなことない! ミトは付き人でもあるけど……私のフィアンセでもあるんだから!」  きゃあ、と周りの女の子たちが悲鳴をあげた。  
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